私たちのカラダは、血液が全身を巡っていることで生命が維持されています。特に重要な組織である心臓はポンプのように収縮 と拡張を繰り返しながら、この血液を全身のあらゆる組織に送り出しています。 その際に血液が血管の内側の壁(血管壁)に与える圧力が「血圧」です。今回は、高血圧について解説していきます。
血圧について
心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返しながら、この血液を血管に送り出しています。 その際に血液が血管の内側(血管壁)に与える圧力が「血圧」です。血圧は、次の2つの数値で表されます。
●収縮期血圧(最高血圧、上の血圧)......心臓の収縮によって血液が全身に送り出される時 の圧力。血管を押し広げることになり、血管壁にかかる圧力は最も強くなる。
●拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)......収縮した心臓の中に血液が再び送り込まれ、心臓 が拡張して元の大きさに戻る時の圧力。この時、心臓から血管への血液の送出はなく、大動 脈にたまっている血液のみが血管に送り出されるため、血管壁にかかる圧力は最も弱くなる。
血圧値は、心臓が1回の収縮で送り出す血液の量と、血管の太さや血管の壁の硬さによって決まります。送り出す血液量が多く、血管が細く、血管壁が硬いほど血圧値は高くなります。
高血圧の診断基準値
血圧には、これ以上になれば高血圧とする医療機関での「診断基準値」があります。
血圧は変動しやすいため、高血圧の診断には正しく血圧測定を行うことが重要です。
高血圧の診断は、診察室で測定した血圧(診察室血圧)や家庭で測定した血圧(家庭血圧)に基づいて行われます。また、必要に応じて、自動血圧計を装着して1日の血圧を15~30分おきに測定する24時間自由行動下血圧測定が行われることもあります。
高血圧の治療指針である「高血圧治療ガイドライン2014」では、血圧の値を下記(表1)のように分類しており、診察室血圧の収縮期血圧/拡張期血圧の両方あるいはどちらかが、140mmHg/90mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。これまでの研究から、血圧が140/90mmHg以上になると、脳卒中や心筋梗塞などの脳・心血管疾患発症や死亡リスクが高くなることから140/90mmHg以上が高血圧の基準とされたようです。
また、近年、家庭血圧は疾病リスクを予測するのに優れることが明らかにされ高血圧の診断に家庭血圧も用いられるようになりました。家庭血圧の場合、135/85mmHg以上で高血圧と診断され、家庭血圧と診察室血圧による診断が異なる場合は家庭血圧による診断を優先するとされています。
120-129/80-84mmHgの正常血圧が理想的ですが、140/90mmHg未満の正常域血圧でも、安心できない血圧の数値があります。
それは、130-139/85-89mmHgの正常高値血圧に該当する場合は、120/80mmHg未満の至適血圧と比較すると脳・心血管疾患になる人が多いことから注意が必要です。
●高血圧の診断基準値(診察室血圧)
収縮期血圧 ≧ 140mmHgまたは拡張期血圧 ≧ 90mmHgおよびその両方
●高血圧の診断基準値(家庭血圧)
収縮期血圧 ≧ 135mmHgまたは拡張期血圧 ≧ 85mmHgおよびその両方
様々な高血圧
- 非高血圧
診察室血圧が基準(140/90mmHg)未満であり、なおかつ診察室外血圧も基準(135/85mmHg)未満の場合は、血圧が安定的に正常な非高血圧に分類されます。 - 持続性高血圧
診察室でも家庭でも基準を上回る場合、常に血圧レベルが高い持続性高血圧に分類されます。一般的な高血圧とは、この持続性高血圧を指すものです。動脈に高い圧力がかかり続けるため、血管に負担がかかって、心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクが2〜3倍程度高まるとされています。 - 白衣高血圧
病院で血圧を測ったら、家庭で測ったときよりも高かった、こんな経験はないでしょうか。医師や看護師などの白衣を着た医療関係者がいる病院やクリニックにおいてのみ高血圧になることを、白衣高血圧といいます。診察室高血圧とも呼ばれています。しかし、まったく正常というわけでもなく、一部は持続性高血圧に移行するリスクもあるので、普段から注意しておくことが大切です。 - 仮面高血圧
白衣高血圧とは逆に、診察室血圧は非高血圧なのに、診察室外血圧が基準値を超える状態を仮面高血圧といいます。仮面高血圧には、起床時の血圧が高い「早朝高血圧」、夜間に寝ている間の血圧が高い「夜間高血圧」、昼間に高くなる「ストレス性高血圧(または職場高血圧)」があります。いずれにしても脳・心血管疾患リスクは、正常血圧よりも2〜3倍高く、持続 性高血圧患者と同程度か、それ以上をマークすることもあるので注意しましょう。
本態性高血圧と二次性高血圧
高血圧は、原因がはっきりしない本態性高血圧と、原因が特定できる二次性高血圧に分けられます。
日本人の高血圧の約90%は本態性高血圧といわれており、食生活、ストレス、過労、肥満、遺伝などのいくつかの要素が複雑に絡み合って発症するのではないかと考えられています。一方、二次性高血圧は、ホルモン異常や心臓病、腎臓病など、特定の病気によって起こります。
この2つは治療方法が大きく異なるので、高血圧と診断されたら、自分の高血圧がどちらのタイプなのか知ることが大切です。
▲ページのトップへ戻る日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2009」、「高血圧治療ガイドライン2014」
より引用
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